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(10)男性不妊症  染色体検査

 生命体としてのヒトの基盤を考えてみましょう。
  先天性疾患の分類について
 

先天性疾患とは、生まれた時点ですでに備わっているもので病的な因子が祖先や父、母から伝えられた固有の「性質」や「形状」を示すものです。先天性疾患は下記の分類がなされます。

○遺伝子が酵素に作用する

   先天性代謝異常、フェニルケトン尿症

○染色体の異常によるもの

   ①常染色体異常・・・ダウンDown症候群など

   ②性染色体異常・・・クラインフェルター症候群   ターナー 症候群

○病的素因によるもの

   小頭症、血友病、先天性魚鱗症、色覚異常、夜盲、青色強膜、 多指症、白皮症などがあります

○体質素因によるもの

※病的素因に入るものですが、疾病が発病していない状態で

     両親から獲得した素因です。

※先天性疾患などの素因について、病的以外の素因については、人種素因、年齢素因、性別素因があります。これらの 素因は、非病的に獲得された素因ですので問題はありません。

※「先天」なる言葉は古代中国の書物「易経」からの引用と いわれます。「易経」といってもなじみが少ないですが、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の書物で易や占いの教本です。          

 

  染色体について
  染色体は体を形成するすべての細胞に存在いたします。染色体は、髪の毛、人の風貌、血液型、性格、特殊な病気などさまざまな情報を伝える多くの遺伝子が連続してひも状になったものです。顕微鏡では観察できないが細胞の核にあるDNAは、ヒストンというタンパク質と結合して、「クロマチン」という細い糸状をしており、細胞が分裂する時に、クロマチンは凝縮して太いひも状になり、顕微鏡で観察できるようになります。このひも状の構造を「染色体」と呼びます。染色体という名称は、顕微鏡での観察用の色素で染まりやすいことからつけられました。。細胞分裂のときに観察できる染色体の数は、生物の種類によってことなりますが、ヒトの体細胞には23対の染色体が含まれ、ヒトの染色体は2セットを一組となっております。このような染色体のもちかたをする生物を「2倍体」と呼びます。。2倍体である生物は同じ染色体を2つずつ対にもっているわけですが、この2本の染色体には同じ形質にかかわる遺伝子(対立遺伝子)が同じ順序で並んでいます。 うち22対(44本)は常染色体と呼ばれ、男女に共通ですが、残りの一対は性染色体で男性はXY、女性はXXです。個体は母体で精子と卵子が合体(受精)したときにはじまります。精子と卵子は、それぞれ23本の染色体構成で、卵子はX染色体を一つ、精子はXかYかどちらか一つをもつ二種類になり、どちらかの精子が受精するかによって性別が決まります。Y染色体はX染色体に比べてはるかに小さく、形も異なるが、減数分裂のときにX染色体とY染色体は対合するので相同染色体であるといえます。子供は、以上のように父と母から同じ数の染色体を受け継ぎ、両方の形質を兼ね備えた個体として誕生します。
不妊症、無精子症、無月経症エリアでの鍼治療は結果を残すのにいろいろな工夫をしないと結果が導き出せません。

 

  染色体異常とは
  染色体は遺伝子・DNAの担体で,ヒトの体細胞には46本の染色体がある.通常22対の常染色体と2個の性染色体とからなっている.ある染色体の全てあるいは一部分が多くなったり(トリソミー,テトラソミー),少なくなったり(モノソミー)することにより発症するのが染色体異常である.
①数の異常
②構造上の異常

 

 

染色体異常とハリ治療の対応

 

不妊治療に関して、先天性疾患の取り扱いについては慎重に

対処させていただいております。
○常染色体数の異常・・・・対応できません
○性染色体数の異常・・・・対応できません  

  ※47XXYは検討いたします
○常染色体数以外の異常・・内容により検討いたします
○性染色体数以外の異常・・内容により検討いたします
○Y染色体一部欠損・・・・ 結果を残しております

 

  常染色体異常・・・・・①数の異常(numericalaberration)
 

○常染色体トリソミー(重複)trisomy

            ・・・一対の染色体が3本になる
○モノソミーmonosomy・・・・・一対の染色体が一つになる
○常染色体部分モノソミー・・・一部分の欠失(del)
○倍数性異常polyploidy・・・・三倍体、四倍体になるもの

 

  常染色体異常・・・・・②構造上の異常
  ○相互転座(reciprocal translocation)
○ロバートソン型転座(robertsonian translocation)
○挿入(insertion)
○逆位(inversion)
○重複(duplication)・・・部分trisomy
○欠失(deletion)・・・・部分monosomy
○不均衡型異常(unbalanced aberration)
○環状染色体(ring chromosome)
○位重複(inverted duplication)
○イソ染色体(isochromosome)
○2動原体染色体(disentric chromosome)
○無動原体染色体(acentric chromosome)
○モザイク(mosaicism) 
○キメラ(chimerism) 
○ギャップ(gap)

 

  常染色体・・・構造異常(structural aberration)症例
  18qモノソミー
9pモノソミー
5pモノソミー(5p-症候群)
5qモノソミー(5q-症候群)
4pモノソミー 

 

  常染色体・・・数的異常(numerical aberration)症例
  ○第21番常染色体トリソミー(ダウン症)
○第18番常染色体トリソミー(エドワード症候群)
○第13番常染色体トリソミー(パトー症候群)  生後1年以内に90%が死亡
○第8番常染色体トリソミー
他の常染色体には、より重要な遺伝情報が多いため、トリソミーは致死的となり早期に流産するためである。染色体のサイズが大きい方から染色体番号は振られているので、染色体番号が若い程重症になる。
※第22番常染色体トリソミーの画像は、日本ハリセンターで妊娠した方の胎児の染色体です。ほぼ妊娠7~8週程度で流産になります

 

  染色体異常例
 

46,XX    正常女性
46,XY  正常男性

45,X Xモノソミー(Turner 症候群)
47,XXY 2本のX染色体と1本のY染色体の核型

(Klinefelter 症候群)
47,XXX 3本のX染色体の核型
47,XYY 1本のX染色体と2本のY染色体の核型

47,XX,+21 21トリソミー(トリソミー型ダウン症候群)
47,XX,+mar 過剰な由来不明のマーカー染色体を1個認める女性
46,XX,add(1)(p36)

46,XX,add(1)(?::p36→qter)


由来不明な付加染色体が1p36に付着している.
46,XX,del(2)(q35)
46,XX,del(2)(pter→q35:)   
2q35から末端部までの端部欠失,すなわち2q35から

末端部までの部分モノソミーである.

46,XX,del(3)(q12q21)
46,XX,del(3)(pter→q12::q21→qter)
3q12から3q21の部分の中間部欠失,すなわち

3q12から3q21の部分モノソミーである.
46,XX,der(4)t(4;5)(p16;q25)pat
46,XX,der(4)(4qter→4p16::5q25→5qter)pat


p16と5q25を切断点として末端部までの部分が

相互転座した均衡型構造異常をもつ父親から由来した,

不均衡型構造異常である.派生染色体は4番染色体で,

4p16から4pterを欠失し,5q25から5qterが重複している. 45,XX,dic(13;13)(q14;q32)
45,XX,dic(13;13)(13pter→13q14::13q32→13pter)
13番の相同染色体それぞれにq14とq32で切断と再結合

が起こり,相同染色体による二動原体染色体となっている.

正常な13番染色体は見られず,総染色体数は45.

 46,XX,dup(6)(q23q27)
46,XX,dup(6)(pter→q27::q23→pter)
6q23から6q27部分の重複,すなわち6q23から6q27部分の

部分トリソミーを有する6番染色体の不均衡型構造異常.

46,Y,fra(X)(q27.3)
男性で、X染色体のq27.3に脆弱部位を認める.脆弱X症候群. 46,XX,ins(7)(p15q22q32)
46,XX,ins(7)(pter→p15::q32→q22::p15→q22::q32→qter)
7番染色体長腕のq22からq32部分が短腕のp15ヘ正位挿入

している.全体としては均衡型構造異常.

 46,XX,inv(8)(p12p22)
46,XX,inv(3)(pter→p22::p12→p22::p12→qter)
8p12と8p22を切断点とする8番染色体短腕内の腕内逆位.

全体としては均衡型構造異常.

46,X,i(X)(q10)  46,X,i(X)(qter→q10::q10→qter)
1本のX染色体が長腕の同腕染色体となっている.すなわち,

X染色体の短腕のモノソミーとX染色体の長腕のトリソミー

を有している女性.Turner 症候群にみとめられる核型

 

  核型記載法
 

国際的取り決めによる核型記載法(An International System for Human Cytogenetic Nomenclature(1995)

 

add  Additional material of unknown origin 由来不明の過剰染色体部分
arrow (→ or ->)  From-to, 詳述法で起点から終点を示す
brackets, square ([ ])  観察した細胞の数を囲む
chi  Chimera キメラ
colon, single (:)  詳述法で切断を示す
colon, double (::)  詳述法で切断と再結合を示す
comma (,)  染色体の数,性染色体,染色体異常を区別する
del  Deletion 欠失
de novo  染色体異常が遺伝性でなかったことを示す
der  Derivative chromosome 派生染色体 
dic  Dicentric 二動原体
dup  Duplication 重複 
fra  Fragile site 脆弱染色体部位 
h   Heterochromatin 構成性のヘテロクロマチン(異質染色質)
i  Isochromosome 同腕染色体
ins I nsertion 挿入 
inv  Inversion or inverted 逆位,あるいは逆位の 
mar  Marker chromosome マーカー染色体 
mat  Maternal origin 母親由来 
minus  sign (-) Loss 減少 
mos  Mosaic モザイク 
multiplication  sign (×) 再構成染色体の複数のコピー 
p  染色体短腕
parentheses ( )  染色体と切断点の構成的変化を囲む 
pat  Paternal 父親由来
plus  sign (+) Gain 増加
q  染色体長腕
r  Ring chromosome 環状染色体 
rea  Rearrangement 再構成
rec  Recombinant chromosome 組換え染色体
rob  Robertsonian translocation ロバートソン型転座 
semicolon (;) 1つ以上の染色体を含んだ構造的再構成の染色体や切断点を区別する
slant line (/)  クローンの区別
t T ranslocation 転座 
tel  Telomere 染色体端部
ter  Terminal 染色体末端 
upd  Uniparental disomy 片親性ダイソミー 

 

上記の検査などから、男性不妊症や無精子症の緻密な診断がなされます。精度の高い診断が今後の男性不妊症治療に深い関わりをもち結果の残る医療につながる基礎になります

 

 

 

                  Gバンド方式染色体

         非閉塞性無精子症   46XY 正常染色体

         非閉塞性無精子症   46XY Y染色体性無精子症

   非閉塞性無精子症   47XY クラインフェルター症候群

女性染色体検査(正常)

 染色体異常 常染色体の数の異常・・ダウン症候群
常染色体の数の異常・・ねこ鳴き症候群
性染色体の異常・・・・ターナー症候群
単純遺伝性疾患     常染色体性劣性遺伝病・・・部分白子
 常染色体性劣性遺伝病・・フェニルケトン尿症
             全身白子
             全色盲
             先天性聾
 伴性劣勢遺伝病・・赤緑色盲   血友病
         進行性筋ジストロフィー
不規則遺伝性疾患 精神病、てんかん、糖尿病、高血圧、バセドー、先天性奇形

 

   流産胎児の染色体(22番が一本多いです→22トリソミーと言います)

 

BIOPSY-ICSI 不安な技術です。X染色体や常染色体に遺伝子障害もあるはずです。生まれなくて良かったと思います。こんなケースは一度や二度ではありません。注意しましょう。常染色体の22番に数の異常が出る事など、常識では絶対ありえないことです。

Y染色体一部欠損について

         

 


  ワンポイントアドバイス  
ベストを尽くす・・・今だから。 今でないと。

 男性不妊症では、染色体異常の方は無精子症の方ほど多くはありませんが、極度の乏精子症やホルモンの異常や男性ホルモンの異常低下がみられる方は、染色体検査をお勧めいたします。染色体検査には・・・

①常染色体検査・・・・数の異常、転座障害

②Y染色体一部欠損・・AZFエリア、SRYエリア、DAZエリア